Flashはブラウザゲームのすぐれたプラットフォームですが、ジョイスティックが使えないのが欠点のひとつです。一方、新興のゲームプラットフォームにUnityがあります。こちらのプラグインはまだほとんど普及していませんが、ジョイスティックに対応しています。
FlashにもUnityにも、それぞれブラウザのJavaScriptとの連携手段が用意されています。それなら、Unityからブラウザを介してFlashにジョイスティックの状態を送れば、Flashでもジョイスティックが使えるんじゃ? と思いついたので、実際にやってみました。

ジョイスティックの状態を送る一連のプロセスについて。まずUnity側からです。Unityでは、物理デバイスの入力を整理・抽象化して、それぞれ名前をつけて扱うようになっています。メニューの Edit > Project Settings > Input にその設定があります。今回はひとまず生データを送りたいので、レバーの軸とボタンを一通り登録します。レバーのデッドゾーン(Dead)もゼロにしておきます。

気分の問題ですが、遅延を少なくするために、Unityの最大フレームレートを上げておきます。
function Awake()
{
Application.targetFrameRate = 300;
}
次に、ジョイスティックの状態の変化をブラウザに毎フレーム送信します。ブラウザとの通信についてはUnity Web Player and browser communicationに説明があります。Application.ExternalCall()でHTML内のJavaScriptを呼び出すことができます。実際のスクリプトとしては以下のようになります。
var axes = new float[9];
function Update()
{
for (var i = 1; i <9; i++) {
var position = Input.GetAxis("Axis" + i);
if (axes[i] != position) {
axes[i] = position;
turnOnLed();
Application.ExternalCall("axisHandler", i, position);
}
}
for (i = 0; i < 16; i++) {
var buttonName = "Button" + i;
if (Input.GetButtonDown(buttonName)) {
turnOnLed();
Application.ExternalCall("buttonHandler", i, 1);
}
if (Input.GetButtonUp(buttonName)) {
turnOnLed();
Application.ExternalCall("buttonHandler", i, 0);
}
}
}
ちょっとしたテスト兼演出として、関数を呼び出したときにLEDが点灯するようにしました。
function turnOnLed()
{
GameObject.Find("Led").SendMessage("TurnOn");
}
次にHTMLです。Flashの埋め込みにはSWFObject 2.2を使用しています。Unityから呼び出されたJavaScriptの関数axisHandlerとbuttonHandlerが、ExternalInterfaceで登録したActionScriptの関数を呼び出します。
var attributes = {
id:"Flash"
};
swfobject.embedSWF("Game.swf", ...);
...
<script type="text/javascript">
function axisHandler(no, position) {
document.getElementById("Flash").axisHandler(no, position);
}
function buttonHandler(no, state) {
document.getElementById("Flash").buttonHandler(no, state);
}
</script>
ExternalInterfaceは、ローカルファイルシステムではセキュリティのため動作しません。ローカルにApacheを立ててそこでテストするのが簡単です。また、ExternalInterfaceはいろいろ罠があって、ちょっとしたことで動かなくなることが多いようです。今回もそれでなぜかIEでだけ動かず、しばらくはまったんですが、教訓としては、SWFObjectのtest suiteから始めるのがいいと思います。
ここの”Browser communication test page”がブラウザとの通信のサンプルです。test suiteというだけあって動くことが保証されていますので、このサンプルがサーバ上できちんと動くことを確かめてから少しずつ書き換えていくのがいいんじゃないでしょうか。
Flash側では、以下のようなクラスを作ってコールバック関数を登録し、メッセージを受け付けます。
package
{
import flash.external.ExternalInterface;
public class Joystick
{
public static const AXIS_MAX:int = 9;
public static const BUTTON_MAX:int = 16;
private var axes:Vector.<Number> = new Vector.<Number>(AXIS_MAX);
private var buttons:Vector.<int> = new Vector.<int>(BUTTON_MAX);
function Joystick()
{
if (ExternalInterface.available) {
ExternalInterface.addCallback("axisHandler", axisHandler);
ExternalInterface.addCallback("buttonHandler", buttonHandler);
}
}
public function axisHandler(no:int, position:Number):void
{
axes[no] = position;
}
public function buttonHandler(no:int, state:int):void
{
buttons[no] = state;
}
public function getAxis(no:int):Number
{
return axes[no];
}
public function isButtonPressed(no:int):Boolean
{
return (buttons[no] == 1);
}
}
}
これでUnityからFlashまでジョイスティックの状態が伝わるようになりました。
ちなみに、いったんここまで作った後で、逆の方法に思い当たりました。つまり、UnityからFlashにジョイスティックの状態を流し込むのではなく、FlashからUnityにジョイスティックの状態を問い合わせるやり方です。もしこちらができれば、通信量も間違いも少なく好ましいでしょう。が、ブラウザからUnityの関数をSendMessageで呼び出したときに、戻り値が取得できないので断念しました。
さて、これで、「Unityのプラグインがインストールされていればジョイスティックでも操作できるFlash」ができました。アクロバティックなやり方ですが、信じがたいことにIE8、Firefox 3.6、Google Chrome 4それぞれでXbox360コントローラなどを使って普通に操作できるようです。特にアナログレバーを動かすとかなり頻繁にメッセージが送られるのでもつだろうかと心配だったんですが、レスポンスは悪くないし、CPU使用率もたいして上がりません。作る前はデータの間引きなども考えていたんですが、必要なさそうなのでやっていません。
で、実用性はどうかというと、微妙かなと思ってます。まず、ブラウザゲームでジョイスティックを使う文化がないですよね。それに、ジョイスティックを使いたい人はすでにJoyToKeyなどを使っているはずです。アナログレバーが使えるという違いはありますが、Flashゲームはまずマウスとキーボードで遊べるように作りますから、ゲームにアナログレバーの必要な操作を持ち込むわけにはいかないでしょう。そもそも、ジョイスティックを使うゲームなら最初からFlashではなくUnityで作れよという気もします。
あと、1つのウェブページに2つの標準でない技術を使うことになるので、それなりにリスクがありそうです。Unityの出力するHTMLファイルも結構複雑ですし(ちなみにコメントで説明が書かれているので読んでおくのがおすすめです)、環境によっては不具合が発生するかもしれません。導入には結構ためらうものがあります。
もしUnityのプラグインがある程度普及すれば(20%くらい?)メリットのほうが大きくなるかもしれません。また、いずれにせよFlashでジョイスティックを使う方法ができたということで、ウェブではなく、どこかへの展示用のFlashなどでしたら役に立つかもしれません。
……ということで、どうもひたすら微妙な感じ。こんな変態的なことをさせる前に、そもそもAdobeがFlashでジョイスティックをサポートしてくれたらいいんですけどね……。ゲーム志向にするとか考えてるならその辺検討してほしいなあ。